「争族」という言葉が使われ始めたのはいつごろからでしょうか。

昨年10月に放映された向井理さん主演のテレビドラマに、「遺産争族」というタイトルが付けられたぐらいですから、関心の高い言葉になりつつあるのでしょう。

◆全体の1.2%

「争族」というのは、文字通り「家族が争う」こと。

身内が亡くなった時に、その財産を引き継ぐ相続人同士が揉めること全般を指します。
こうしたトラブルは資産家だからこそ起こり得ることであり、多くの人には関係ない話と思われるかもしれません。でも実際には、財産の多寡に関係なく争いは発生します。

相続の際に、遺された財産を分けることを遺産分割といいます。

基本的な割合は民法の中で定められていますが、みんなの話し合いがスムーズに済めばどのように分けても問題ありません。また、亡くなった人が遺言書を書いていた場合、その遺言書の内容が優先されます。

こうした話し合いや遺言書の時点でみんなが納得すれば何も問題ないのですが、納得のいかない相続人がいる場合など、話し合いがまとまらなければ大変です。最悪のケースでは裁判にまで発展してしまい、何年にも渡って争いが続くこともあり得ます。

ちなみに、こうした相続を巡る裁判を管轄するのは家庭裁判所です。

裁判所司法統計によると、遺産分割を巡る争いとして裁判所に持ち込まれた新受件数は、2014年で15,261件。この年に亡くなった人が127万人ですから、単純計算すると裁判にまで持ち込まれるのは全体の1.2%となります。

◆相続争いに財産額は関係なし

この数字だけを見ると、100人に1人程度なので、「やっぱり金持ちだけの話ね」と思いがちですが、そうではありません。
新受件数では遺産額による分類がわかりませんが、調停成立件数に占める財産額5,000万円以下の事件の割合を見ると全体の約75%であり、そのうちの約32%は1,000万円以下のケースなのです。

まあ、揉めようが揉めまいが、そもそも遺産額5,000万円以下という人が圧倒的に多いはずですから、「財産が少ないほど揉める」ということではありません。ただ「うちには争うほどの財産なんてないよ」というのはちょっと違いますというお話し。

日本が高齢化社会であることは周知の事実であり、必然的に今後亡くなる人の数が増えていきます。その結果、争いの数も増えることが想定されます。

相続が発生した際には、ただでさえ多くの手続きを余儀なくされる負担が発生します。
その上に親族間で揉め、裁判にまで発展するとなると、時間的にも精神的にも、そして金銭的にも大きな負担となり、その後の親族関係にも影響してしまいます。つまり、いつまでもスッキリしない状態が続き、ご自身の人生すら心から楽しめなくなる可能性があるわけです。

◆結局はコミュニケーション次第

揉めることを積極的に望まれる方は少ないはずなのに、こうした事態になってしまうのは、お互いにとって不幸なことです。

だからこそ、相続発生前にやっておきたい対策があります。

相続にかかる事前対策といえば、遺産分割対策や節税対策、納税資金対策などがあげられることが多く、やはり「うちは財産が少ないから関係ない」となってしまいがちですが、何よりも大切なのは「親族間のコミュニケーションを円滑にしておくこと」です。

小さいころは同じ屋根の下で家族として生活してきた兄弟姉妹も、大人になるにつれて生活の根拠が別々になっていくことが一般的。結婚して新しい家族を築く場合など、一番に考えるべき「家族」が変化することもあるでしょう。

それと同時に顔を合わせる機会が減り、コミュニケーションが希薄化することは珍しくありません。

「繰り返し接すると好意度や印象が高まる」というのは、ザイアンスの法則として知られるもので、かいつまんでいうと、「人は、相手のことを知れば知るほど好きになる」というお話。

これは逆から考えれば、「相手のことがわからなくなればなるほど好きではなくなる」(⇒「嫌いになる」とまでは言いにくいですから…)とも考えられます。

将来の相続だけを考えてコミュニケーションを取るというのはおかしな話ですが、親族間のコミュニケーションが円滑であるほど、争族になる可能性が低くなるのは当然なのではないでしょうか。

とはいえ、どうすればコミュニケーションが取れるかがよくわからない人もいらっしゃるかもしれません。
そういう場合、とにかく会う頻度を少しでも上げるように心がけてみてください。

数年間会っていないのであれば、円滑なコミュニケーションなどといったことは考えず、とにかく1年以内に会うことだけを目標にするとか。

買ってきたお土産を渡すだけでもいいでしょう。
相手の役に立つ可能性のある不用品があるのであれば、「いらないか?」と聞くだけでもいいでしょう。

そんな感じでも十分です。

ちなみに、私が主任研究員として講師を務める生活経済研究所長野の家計の見直しセミナーでは、「相続を争族にしないための5つのポイント」という演題があります。
ちょうど先日の公開収録でこちらの演題をお話し、9月20日(火)から10月4日(火)がWEB配信期間となります。この機会にじっくり学んでおきたい方は是非一度ご覧くださいませ。

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