まずはご案内から。

10月30日(日)に名古屋で開催される、日本FP協会愛知支部さん主催のFPフォーラムで講演を行います。事前申し込みは必要ですが、どなたでも無料でご参加いただけるセミナーなので、ご都合がよろしければ是非足をお運びください。

お申し込みは、FP協会愛知支部さんのサイトからお願いいたします。

ちなみに、この時期は「FPの日」と称して、全国の都道府県でFP協会主催のセミナーや相談会が行われますので、ご自身の地域のイベントも是非ご確認ください。

そして、10月8日(土)と9日(日)にグランフロント大阪で開催されるFPフェアでは、「FP実践塾」の講師を務めます。すでに参加申し込みの受け付けは完了していますが、8日の夜に行われる会員交流会にも参加しますので、会場で見かけられた方は気軽にお声掛けください。

◆増大する社会保障給付

さて、今回は社会保障費について取り上げます。

社会保障とは、国民が最低限の生活を維持できるように国が用意している制度のこと。公的年金や公的医療保険などの社会保険制度のほか、子どもや高齢者に対する福祉制度、生活保護なども社会保障制度に含まれます。
1年間の支出額は、国立社会保障・人口問題研究所が社会保障費用統計として公表しており、2014年度の社会保障給付費の総額は112兆1,020億円でした。

これは、前年から1.3%増加で、GDPの約23%を占める規模。内訳をみると、「年金」が54兆3,429億円(48.5%)で一番多く、次いで「医療」の36兆3,357億円(32.4%)、「福祉その他」の21兆4,234億円(19.1%)と続きます。

ちなみに、年金といっても老後に受け取る「老齢年金」のほか、「遺族年金」や「障害年金」がありますし、医療にしてもすべてが高齢者向けではありません。
とはいえ、機能別社会保障給付費という数字を見てみると、「高齢」が54兆4,471億円で全体の48.6%を占めていますから、やはり高齢者の増加に伴って支出が増えているという事実は間違いないようです。

◆1人に対する社会保障給付費の負担額を計算する

では、仕事をリタイアした後の生活について少し考えてみましょう。

何歳まで働くのか、年金の受給額はいくらか、貯金はいくらあるのかなどは人によって大きく違いますから、ここでは統計上の平均の数字を使います。

まず、総務省の家計調査(2015年)において65歳以上世帯が受け取る社会保障給付の金額を見ると、夫婦世帯で194,874円、単身世帯では104,832円となっています。ということは、単純計算で1人あたりの平均は約10万円と考えられそうです。
仮に85歳まで生きるとして、65歳からの20年間の総額は2,400万円。当然この数字は、85歳までに亡くなれば少なくなり、85歳を超えて長生きすると増加します。

また、多くの方は加齢とともに医療機関を利用する機会が増えるものです。

厚生労働省が公表している「国民医療の概況」によると、65歳以上の1人あたりの年間医療費平均は約72万円。自己負担は所得水準によって1割~3割までありますが、今後は自己負担が増える傾向にある点を考慮して、2割が自己負担と考えましょう。ということは、社会保障費として賄われているのは掛かった医療費の8割にあたる約58万円。20年間の合計で1,160万円が、1人に対する給付として使われることなります。

あとは、亡くなる前の最後の5年間に介護保険も利用するとします。こちらは、要介護者の平均利用額が約19万円。自己負担は原則1割ですから、9割が社会保障費だとすると月額約17万円。5年間で1,020万円が、やはり1人に対する給付として使われています。

◆国と個人を巡る合成の誤謬

さて、85歳までの20年間で1人に支払われる社会保障費は、年金等の収入に関するもので2,400万円、医療で1,160万円、介護で1,020万円となりました。合計は4,580万円です。繰り返しますが、これは「1人に対する国の負担額」です。

年金は生きている期間に対応して増減しますが、医療や介護に掛かるお金は「健康に注意すれば抑制できる」という事実があります。
つまり、健康に注意して医療費を押さえれば社会保障給付は抑制できるというわけですが、実はここに忘れられている視点があります。

仮に医療費が平均の10分の1しかかかってない人がいたとしましょう。
1人あたりの平均的な年間医療費は72万円でしたから、その10分の1だと7.2万円。社会保障からの給付はこのうちの8割にあたる5.76万円なので、これだけを見ると明らかに減少しています。

でも、健康に気をつけていると長生きする可能性が高まりますよね。

仮に、この人が95歳まで生きられると、先ほどの前提より10年間の長生きですから、10万円×12ヶ月×10年間=1,200万円の増加。
つまり、「健康に気を付けて長生きする人が増えると、社会保障給付は増加する」わけです。

逆をいえば、健康にまったく気を遣わず、医療費を人の2倍使う人がいても、その方が平均より10年早く亡くなると、社会保障給付は減少するのです。(細かい計算は割愛します)

そもそも、日本人の平均寿命の延びと、社会保障給付費の増加は連動しているわけですから、平均寿命より早く亡くなる方で試算すれば総額が減るのは当たり前です。

メタボ検診や生活習慣病予防など、健康を維持するための啓発活動は数多くある一方、健康で長生きの人が増えると社会保障費が膨れていくという現実があります。
そして、社会保障費の増大が問題になると、年金額の引き下げや医療保険の自己負担増などによって、個人の将来の生活に不安をもたらすということなのです。

一人ひとりが正しいと思って取った行動でも、それが集まると悪い結果を生むことを「合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)」いいますが、お金を掛けないように健康を維持して長生きすると、国全体としての経済的な負担が大きくなり、個人の自己負担が増えてしまうというのも、一種の合成の誤謬ではないでしょうか。

このあたりに、社会保障を巡る改革の難しさがあるんだなって、改めて感じた次第です。

そうそう、老後の生活に関して、本日(10月4日)発売の「週刊女性」に記事協力をしています。こちらは「おひとり様」を対象にした特集ですが、ご興味ある方は是非お読みくださいませ。

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