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◆受給資格期間が10年に短縮

さて、11月1日の衆議院本会議で、国民年金の受給資格期間を短縮する改正法案が可決されました。このあと参議院での審議を経て今国会中に成立する見通しとなっています。

現在の国民年金は、20歳~60歳の40年間のうち25年以上の保険料の納付期間(免除や猶予を受けた期間も含む)がないと将来の年金(=老齢年金)を受給する資格が得られず、年金を受け取ることができません。
また、会社員や公務員等の方が加入する厚生年金は、国民年金の受給資格がないと受け取れませんから、やはり25年間の保険料納付期間が必要です。

この25年の期間(=受給資格期間)が、今回の法案成立によって10年に短縮されることになりました。

例えば、会社勤めをしていた15年間はちゃんと保険料を払っていたけど、それ以外の期間は支払っていなかったという人は、現行の法律では原則として老齢年金をもらえませんが、2017年9月分からの年金を受け取れるようになります。

◆公的年金の財源問題

今回の改正によって、約64万人といわれる対象者が、新たに年金を受給できるようになります。衆議院の可決が全会一致であったことからもわかるように、期間の短縮自体は好意的に受け取られていますが、そのためには必要となる新たな財源の話は上手く進んでいないようです。

そもそも、受給資格期間の短縮は、平成24(2012)年8月に成立した年金改正法案の中に盛り込まれていた内容です。そして、この実現に必要な財源を確保するため「消費税が10%に上がるタイミング」に合わせて施行される予定でした。

…が、ご承知の通り消費税の増税時期は平成31(2019)年10月に延期されています。

人口構成を見る限り、今後も年金保険料を負担する働く世代の人数は減少し、年金を受給する高齢者世代は増加することは明らかで、年金の財源問題は大きな課題です。

家計の見直しにおいても、将来の支出が賄えない可能性がある場合、財源を確保するためには「収入を増やす」「支出を減らす」「運用によって資産を増やす」のいずれかの対策を取る必要がでてくるわけですが、公的年金制度は財源問題の解決策をどのように考えているのでしょうか。

◆運用による資産の増加と支出の抑制

公的年金の資産運用を行っているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2014年10月に、運用する資金の投資先配分を見直す「基本ポートフォリオの変更」を発表しました。

ざっくりといえば、国内債券中心だった運用を、株式や外貨建て資産の比率を高めるというものです。ようするに「運用によって資産を増やす」対策を取ったわけです。
運用による高いリターンを求めると、当然ながらそれ相応のリスクを取らなくてはなりません。実際、2015年度の運用は5.3兆円の損失が発生したことが大きなニュースにもなりました。

運用問題に言及すると長くなりすぎるので、ここでは触れませんが、2014年度に15兆円超の利益を上げた際に、それを褒め称えることをせず、損失が出た時にここぞとばかりに大きく取り上げて叩く報道が目立つという姿勢はいかがなものでしょうか。

では、運用以外も考えてみましょう。
働く世代が少なくなることからも、収入増はなかなかハードルが高いので、やはり現実的には支出の削減が進められなくてはなりません。
実はこれに関しても今国会で法案が審議されています。簡単にいうと「世の中の物価や、働く世代の賃金が下がったときには、年金の受給額も引き下げよう」という話です。ただし、このような「既にもらっているものを引き下げる話」は受け入れられにくいものです。実際こちらの法案には反対意見も多く出ており成立するかどうかは不透明です。

収入の増加が見込めないのであれば、支出を減らすか運用による資産増加を目指さなければ財源問題は解決しませんが、今のように「支出を減らすことには反対」で、「運用を見直すとマイナス部分が強調される」という風潮では前に進むことが難しくなります。
こうした点が、年金問題の報道を見ている中で一番強く感じる違和感なのだと思うわけです。

公的年金を巡る問題は自分たちの生活に直結する話ですから、多くの人がもっと関心を持ち、偏った報道や意見に流されない目を持つことが大切なのでしょう。

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