国民年金の受給資格期間を短縮する改正法案が参議院本会議で可決し、来年度からの施行が正式に決まりました。
これによって、将来の年金(=老齢年金)を受給する資格を得るために必要な保険料納付期間(=受給資格期間)の要件が現在の25年から10年に短縮されるのは、11月1日のブログでもお伝えした通りです。

ちなみに、その時にも触れていますが、今回成立した法律は「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」が正式名称で、かいつまんで言うと、「以前に法律改正案で上げた受給期間の短縮は、消費税が10%に上がることとセットとなっていたけど、待ってられないので先行して実施します」というお話。
受給資格期間が10年以上25年未満の人は、2017年9月分からの年金を受け取れるようになるので、実際に年金が振り込まれるのは2017年10月からとなります。

◆老齢厚生年金はどうなる?

ちなみに、会社員や公務員、団体職員の方は、国民年金に加えて厚生年金にも加入しているため、これらの年金も国民年金と厚生年金の双方から受け取れます。

例えば65歳になった際には国民年金から「老齢基礎年金」を受け取ると同時に、厚生年金からは「老齢厚生年金」を受け取るわけです。
老齢厚生年金を受け取るための条件の1つは「老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たしている」ことなので、これまでは25年間の保険料納付期間(免除期間等も含みます)がなければ、厚生年金も受け取れませんでした。今回の改正で10年間の受給資格期間を満たしていれば、老齢厚生年金を受け取れるようになります。

◆遺族厚生年金と障害厚生年金の最低保証期間は変更無し?

さて、ここで疑問に思う1つが、遺族厚生年金や障害厚生年金にかかる「300月(=25年)」の最低保証です。

今回の改正で、受給資格期間が10年(120月)に短縮されたのなら、遺族年金と障害年金の最低保証期間である25年(300月)も、10年(120月)に変更されるのかと思いきや、ここの変更には触れられていません。厳密にいうと、今回の改正案の元となった社会保険審議会では「遺族年金と障害年金の受給資格要件について特段の変更は行わない」と書かれている一方、「バランスが崩れるのは適当ではない」という記述もあります。

そもそも、所定の障害状態に該当した際に受け取れる「障害年金」と、被保険者が亡くなった際に遺族が受け取れる「遺族年金」のうち、厚生年金からの受給には「短期要件」と「長期要件」というものが定められています。

詳細は省きますが、簡単にいうと短期要件に該当するのは保険料納付期間が短い人です。
例えば、Aさんが25歳で亡くなったとします。20歳から社会人となり、国民年金と厚生年金に加入していたとしても、加入期間は5年しかないため、「受給資格期間」は満たしていません。
でも、そこは関係なく、別途定められている遺族年金の受給要件を満たせばAさんの遺族は遺族年金を受け取れます。
この場合、遺族基礎年金の年金額は保険料納付期間に関係なく「定額」です。一方、遺族厚生年金の年金額は「これまでの平均報酬と保険料の納付期間」によって違ってきます。
つまりAさんが5年(60月)しか保険料を払っていなければ、60月分しかもらえないはずですが、ここには最低保証期間が定められており、この期間が「25年(300月)」なのです。これが短期要件に該当した場合の扱いとなります。

◆短期要件と長期要件の整合性

さて、このように短期要件に該当するAさんは、「300月保険料を払っていたもの」として年金額が計算されるわけです。
一方、「国民年金の受給資格期間を満たしている人」は短期要件ではなく、長期要件に該当し、実際の保険料納付期間に基づいて年金額が計算されます。今回の改正によって受給資格期間は10年に短縮されたので、先ほどのAさんの保険料納付期間が15年(180月)あれば長期要件に該当し、年金額は180月で計算されてしまいます。
ということは、保険料納付期間が5年の人は25年分で計算してくれるのに、15年の人はそのまま15年で計算するため、5年の人の方がたくさんもらえてしまいます。

この部分は、2012年の年金部会での審議の中でも課題になっていて、「仮に今回、老齢年金の要件に併せて、長期要件を10年に短縮する場合には、この両者のバランスが崩れることとなり、基本的に適当でない。」と明記されています。

改正法案が成立による、具体的な受給要件の変更についても要注目です。

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