国税庁から2015年の相続税の申告状況が公表されました。

注目されていた、相続税の課税対象となった被相続人の割合は被相続人全体の8.0%。
前年の4.4%から約1.8倍の水準となりましたが、事前予想の上限ぐらいというイメージでしょうか。

一部の専門家から「亡くなった人(被相続人)の半数近くが課税対象となるかもしれない」と言われていた東京国税局管内を見ても、被相続人(約25万3千人)のうち、相続税の課税対象となったのは12.7%(約3万2千人)で、全国平均に比べるとかなり高いものの、あまり極端なことにはならなかったようです。

■相続財産がいくらあると相続税はかかるのか?

相続税は、被相続人が遺した財産額に対して課されるものです。
土地や建物などの不動産、預貯金や投資信託、株式等の金融資産、その他諸々の財産をすべて合算し、そこから借金やお葬式費用などを差し引いた金額がベースになります。これを「課税価格の合計」といいます。

保険や共済からの死亡保険金(死亡共済金)など、相続人の数に応じて一定額まで非課税になりますが、基本的には「課税価格の合計」から「遺産に係る基礎控除額」を差し引いた金額が「課税遺産総額」となり、これが0円以下だと相続税は課されないという仕組みです。

遺産に係る基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人数」。

例えば、両親と子2人の4人家族のケースで父親が亡くなった場合、相続人は母親と2人の子の3人ですから、課税価格の合計が「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」までであれば、相続税はかからないというわけです。

この基礎控除額、2014年の12月31日までに発生した相続では、「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」でした。つまり、先ほどの家族構成では、課税価格の合計が8,000万円までは相続税がかからなかったわけです。
その基準が4,800万円に縮小されたわけなので、「2014年までなら相続税が掛からなかったのに、2015年以降は相続税が掛かるようになった」という人が出てきます。
その結果、冒頭で触れたとおり「課税対象者が4.4%から8.0%に増えた」のです。

■預貯金の扱いが変わる?

そしてもう1つ、基礎控除の話とは全く別の話として、「預貯金も遺産分割の対象になる」という新たな基準が示されました。
これは、2016年12月19日に最高裁判所大法廷が下した判断で、俗にいう「判例が変わった」という話です。

これは突き詰めるとなかなか奥の深い話なので、概略だけに留めておきます。
そもそも被相続人の財産はすべてが遺産分割の対象となるもので、遺言や話し合いなどによって相続人の間で配分を決めるのが原則ですが、預貯金については「法定相続分に応じて当然に分割される」という過去の判例の考えが基本となっていました。

ようするに、財産をどう分けるかという遺産分割の話し合いがまとまっていなくても、「預貯金のうち、自分の法定相続分の金額だけは受け取ることができる」という解釈です。
通常、被相続人の預金口座からお金を引き出そうとした場合、「相続人全員の署名をもらってきてください」と言われますが、この判例があったため「自分の法定相続分だけは引き出せる」という扱いが実務上は行われていました。
(注:金融機関によって対応に違いはあります)

今回の判例変更によって、「話し合いがまとまっていなければ、預貯金は引き出せない」という基準が示されたというわけです。

■当面の資金手当ては事前に準備しておくべき

通常は、預貯金を含めたすべての財産を元に、誰にどう分けるかの遺産分割を行うことが多いので、今回の判例は「実態に合わせた適切な変更」と見る向きが多いようです。
ただ、これによって困る可能性があるのは、お葬式代の支払や当面の生活費のように、たちまち必要なお金が、被相続人の口座から引き出さないと賄えない、というケースでしょう。

逆を言えば、お葬式に掛かるお金や当面の生活費は、予測可能な範囲で事前に別途用意しておけば困ることはありません。
相続に限った話ではありませんが、「将来を見越した事前準備」の大切さを改めて意識するきっかけにしてはいかがでしょうか。

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