個人型DC制度の税制優遇の不思議

2017(平成29)年1月から、個人型確定拠出年金の加入対象者が広がり、これまで利用できなかった、公務員の方や専業主婦などの国民年金第3号被保険者の方が加入できるようになりました。

厚生労働省のサイトを見ますと、個人型確定拠出年金の1月の新規加入者数は26,705人となっています。
制度開始の2001年からの個人型の累計加入者は2016年12月時点で約30.6万人。単純計算するとこれまでは1年平均2万人程度のペースで加入されてきたものが、今回の改正によって1ヶ月で2.6万人増ですから、スタートダッシュとしては良い感じで広がっているようです。

ちなみに、内訳を見ると
第1号加入者:2,146人
第2号加入者:22,647人(うち、共済組合員8,719人)
第3号加入者:1,912人
の合計26,705人。

第1号加入者とは、国民年金の第1号被保険者のことなので、これまでにも利用できた方。第2号加入者は会社員や公務員、団体職員さんなど、厚生年金の被保険者を指し、そのうちの公務員さんが「共済組合員」と表現されています。そして第3号加入者は専業主婦を代表とする国民年金第3号被保険者の方。つまり、今回の制度改正で新たに加入できるようになった人(公務員と第3号被保険者)だけで見ると、10,631人というわけです。

最初のうちは、「加入できるようになることを待っていた人」が手続きをしますから、このペースは今後一気に縮小するかもしれませんが、まずはいい感じでスタートしたのではないでしょうか。ちなみに、過去半年ぐらいの企業型の加入者数の増加は1ヶ月当たり1.6万人程度で、2016年12月末時点の累計加入者数は。約589万人です。

■確定拠出年金とは?

そもそも確定拠出年金は、支払った掛金を自分が選択した金融商品で運用し、その運用結果に応じて将来の受取額が変わるという、自己責任運用型の年金制度。「Defined Contribution Plan」の頭文字を取り「DC」と表記されることが一般的です。
この仕組みを会社が導入し、その会社に勤めている人が加入するものを「企業型」といい、
個人が自分の意思で手続きをして加入するものを「個人型」といいます。

個人型DCは、「iDeCo(イデコ)」という愛称もつけられています(「I」は個人を表す「Individual」からきています)。

さて、運用次第で将来の受取額が変わると聞くと、投資になれていない多くの方にとっては気軽に始めにくい制度かもしれません。
ただ、取扱い金融機関はもちろん、多くのサイトや書籍等でも触れられている通り、税制面でのメリットが大きいため、「やった方がよい」というイメージがあります。

■3つの税制優遇とは?

税制優遇の1つ目は掛金の全額が所得控除の対象になることです。
所得控除の対象になると「税金計算の元となる金額から差し引く」ため、同じ所得の場合、負担する税金が少なくなります。

例えば、毎月1万円の掛け金を支払うとしましょう。この場合、年間掛金の12万円が所得控除の対象なので、課税対象となる所得が12万円少なくなります。
所得税の税率は所得に応じて5%~45%のいずれかとなります。日本人の平均的な所得の場合、適用されるのは多くても20%の税率ですから、所得が12万円少なくなることに対する税金の軽減効果は24,000円。住民税の10%を併せると36,000円の軽減効果です。
12万円の積立に対して、36,000円の軽減ですから大きいですよね。

ただ、所得税率5%の人だと、この効果は18,000円ですし、そもそも住宅ローン減税やふるさと納税などの制度を利用してほとんど税金を払っていない人の場合、このメリットはまったく関係ありません。
ご自身の納税状況を冷静に判断したいものです。

そして2つ目の税制優遇は、運用期間中に得た利益が非課税となることで、これは文字通りの意味です。
運用先として選択した投資信託の価格が大きく上昇し、仮に10万円の利益が出たとしましょう。投資信託等で得た利益には、原則として20%(所得税15%と住民税5%)の税金が課せられるので、「10万円×20%=2万円」が税金となりますが、これが非課税になるわけです。
こちらも、大きなメリットではありますが、当然ながら「利益の出ている状態で投資信託を売却したとき」だけに関係するものなので、やはり状況によって得られるメリットに差が出てきそうです。

■自分で積み立てたお金に対して課税されるのはなぜ?

そして3つ目のメリットは、将来受け取る時にも税金が優遇されることです。

これも基本的な考えは「受け取るお金に掛かる税金を計算する際に優遇される」というものですが、考えてみるとおかしな話です。
会社側が掛金を負担することがほとんどの「企業型DC」はいいとして、個人型DCの場合、掛金を負担するのは自分自身です。
「DC制度では運用してきた資産を受け取る際の税金が優遇される」と言われると、なんとなくお得な気がしますが、そもそも自分が貯めたお金に対してなぜ税金を掛けられないといけないのでしょう?
毎月1万円ずつ銀行で積立貯金をし、30年後に貯まった360万円を一括で引き出す際に、
「一括で受取る場合は退職金となるので退職所得として課税対象となります」と言われたら、「ん?」と思いませんか?
なんで、自分の預貯金を引き出すのに税金がかかるの?って話です。

この税制優遇、そもそもの制度の見本となった「アメリカの内国歳入法401条k項」では、
「所得税繰り延べ」と説明されています。繰り延べというのは、「今は取らないけど、将来取るよ」という話で、ようするに課税時期の先送りです。
1のメリットで、掛金支払時に税金を優遇したので、その分を将来受け取る時に清算する、と考えればわかりやすいでしょうか。
もちろん、優遇の結果「負担する税金がゼロ」になることもあるので、結果的には大きなメリットとなることは間違いありません。

なお、投資信託は購入時や保有時に手数料が掛かるのが一般的です。DC制度には、こうした手数料がとても低い水準になっているケースが多いので、その点でのメリットは大きいかもしれません。

結局のところ、「税制メリットがあるから確定拠出年金を始める」のではなく、ご自身の老後資金の積み立て手段として、確定拠出年金を選択肢に入れる」という意識が大切なのではないでしょうか。

Follow me!

  • Facebook
  • twitter
  • Hatena