相続手続きは、本当に簡素化されるのか?

2016年7月5日のブログでも触れた相続手続きの簡素化に関する制度について、5月からのスタートが法務省から発表されました。

■相続関係の証明書

相続が発生すると、金額の多い少ないにかかわらず、亡くなった人(=被相続人)名義の預貯金や不動産などを、相続人名義に変える手続きをしなければいけません。その際、正当な相続人であることを証明するには、相続関係を証明する現在の戸籍以外に、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍」が必要となります。
手続き先が複数ある場合、各金融機関や法務局等の窓口でこの戸籍の確認が必要となるわけですが、今回の制度がスタートすると、一度揃えて法務局に提出すれば「相続関係の証明書」が発行されるため、これを利用して手続きが進められるようになります。

では、本当に相続手続は簡素化されるのでしょうか?

■今後も残る戸籍収集作業の壁

まず、戸籍というのは1人1通というものではありません。結婚や離婚、法改正や転籍などにより、1人の戸籍が何通にもおよぶことは珍しくありませんし、本籍地を移していると、戸籍の請求先も複数の自治体に及びます。出生から死亡までの連続した戸籍が必要ということは、大正時代や昭和初期の戸籍にまでさかのぼるケースもあります。コンピュータ化された現在の戸籍とは違い、昔の戸籍は手書きで読みづらく、しかも「家」単位で作成されているため、記載されている人数も多いものです。

相続人の方が手続きを進めるうえで、この戸籍収集の苦労が大きな壁となって立ちはだかります。

さらに、こうして集めた戸籍を、法務局や金融機関などの手続きをする窓口に提出するわけですが、その際に窓口の担当者は「戸籍が本当に揃っているかどうか」を確認しなければいけません。
実際の手続きを行うとわかりますが、この確認作業に30分や1時間程度を要することは珍しくなく、休みを取って一気に複数の窓口を回ろうと思っていたのに、1か所や2か所しか行けなかったということになりかねないのです。

メディアの報道では、「戸籍を集める作業が1回で済む」ことをメリットとされているケースがあるようですが、実はこの部分は今までとほぼ変わりません。
ほとんどの窓口では、原本を確認したあとコピーを取りますから、原本は返却されるのが一般的です。つまり、戸籍を集める作業はこれまでも1回だけでよかったわけです。

■手続きの簡素化ではなく、事務作業時間の短縮化

今回の新たな制度がスタートしても、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍の取得」という最初の壁は残ります。ただ、その戸籍を法務局に持って行き「証明書」を発行してもらえば、それ以降の手続はすべてこの1通の証明書で進めることができるので、各窓口での確認作業や、コピーを取る作業は随分と軽減されそうです。

そういう意味で、金融機関等の職員さんにとって、今回の制度スタートはかなりありがたいのではないでしょうか。もちろん、相続人側から見ても、手続きに訪れた際に短時間で処理してもらえることは大きなメリットとなりそうです。

いずれ発生する相続は、事前の備えの有無が、その後の手続きに大きな差となって表れるものです。
手続きの長期化が、親族内のトラブルに発展するケースもありますので、今回の制度改正を機に、今できる準備を進めていくことも大切ではないでしょうか。

Follow me!

  • Facebook
  • twitter
  • Hatena