私たちが加入する公的年金は、「年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)」が運用しています。
国民の大多数が関係する年金ですから、四半期ごとの運用実績の公表には多くの方が関心を持っているようです。

■公的年金の運用実績

7月7日に発表された「平成28年度業務概況書」によると、平成29年3月末時点のGPIFの運用資産額は144兆9,034億円で、1年前から約9兆円の増加。運用収益率は「+5.86%」と2年ぶりのプラスとなっていました。大きな損失を出したと騒がれた平成27年度の損失額が5兆3,098億円で、今回の利益は7兆9,363億円でしたから、この2年間では2兆円を超える利益を出していることになります。ちなみに、GPIFが市場運用を開始した平成13年度から28年度までの累積収益額は53兆3,603億円と公表されています。

毎年何兆円ものプラスマイナスが出ることに危うさを感じるのかもしれませんが、約145兆円の運用資金からすると3~5%の金額。リスクに対する考え方は人によって違うため、一概には言えないものの、100万円を投資している人が、1年間で3~5万円のプラスマイナスが出たとしても、それをもって「リスクが大きすぎて怖い」とは考えにくいのではないでしょうか。
損失が出たときほどニュースとして大きく報じられることも、ネガティブな印象を持つ人が多い原因の一つかもしれません。

■積立金の取り崩しは行われているのか?

ところで、日本の公的年金は「賦課方式」が採用されています。これは、自分が積み立てたお金が将来自分の受け取る年金の原資となる積み立て方式と違い、現役世代納めた保険料が、その時の年金受給者への支払いにあてられるもの。

この方式の場合、「年金受給者」に対して「保険料を納める現役世代」が少なくなると、支えることが厳しくなるのですが、そのためにあるのが約145兆円に及ぶ積立金です。ちなみに市場運用分以外も含む時価ベースの積立金全体は、平成26年度末時点で約203.5兆円となっています(公的年金の財政状況より)。

ここまできたら、収支状況の公表数値も確認してみましょう。

厚生労働省が公表している「公的年金各制度の単年度収支状況(平成27年度)」によると、支出総額50兆9,602億円に対して収入総額は51兆5,612億円。この年は運用損失が出ていましたから、結果的に積立金残高は減少していますが、単年度収支では約6,010億円の黒字です。

年金受給世代の増加によって、給付額が増えているのは事実ですが、「年金支払いのために毎年積立金を取り崩している」わけではないようです。ちなみに、平成28年度予算ベースの社会保障給付費では、56.7兆円が年金関連の支出となっています。

■収入額の実態の計算

そこで、この財政状況に出ている「収入額」を別の角度から独自に計算してみました。
厚生労働省が毎年まとめている「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平成27年度の被保険者数は、国民年金第1号被保険者が1,668万人、第2号被保険者が4,129万人、第3号被保険者は915万人となっています。

この時(平成27年度)の第1号被保険者が負担する保険料は月額15,590円なので、年額にすると187,989円。ただし、保険料の免除を受けている人がいるので、その分を差し引きます。全額免除者が576万人、4分の3免除者が25万人、半額免除者が15万人、4分の1免除者が7万人なので、それぞれの保険料を考慮すると、被保険者負担分の保険料合計は約1兆9,905億円となります。

一方の厚生年金は、標準報酬額によって掛け金は違いますが、全被保険者の平均値が月収で30.5万円、賞与1回あたりが44.1万円となっているので、ここに保険料率(ここはざっくり18%とします)をかけると、年間の保険料負担は82.62万円です。

実際の被保険者負担はこの半額ですが、「保険料収入」を見るわけですから、事業主負担分も含めます。第2号被保険者は4,129万人となっているので、単純にかけ算すると、34兆1,138億円。合計すると約36兆円ですが、実際にはここでは見えていない滞納などもあるでしょうから、これよりも少なめで考える方がいいでしょう。

ちなみに、先ほどの「財政収支」に記載されていた保険料収入は33兆8,065億円なので、概ねこの計算に近い数字です。ここに、国庫負担の金額が12.2兆円、解散厚生年金基金等徴収金が4.6兆円ほど計上されているので、これも加えると先ほどの収入金額51.5兆円に近くなります。

財政破綻が近いようなイメージが報道されることの多い公的年金。
実際の数字を計算してみた全体像は、また違ったイメージになるのではないでしょうか。

今回は、細かい数字が多かったので、できれば図を使って解説したかったですね。
暑い日が続きますが、素敵な連休をお過ごしください。

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